<連載:てっちゃん in ラオス>


  第4話  合意書調印

施設とインターネットを提供してもらえるということで私のやりたいことが一気に現実味を帯びてきた。宿舎は別に探さなければならないが、妻もいないことだし小さい所で我慢すれば予算的には大丈夫だろう。
「簡単な依頼書を出してくれれば、すべて教育局でやるから大丈夫だ。」と言うので、早速作って提出した。「手続きに少し時間が掛かるから、開講の目標を9月とし、7月ごろに来てくれれば合意書(MOU)調印の準備をしておく。」ということだった。
教室用の机を現地で、椅子32脚とパソコン12台をバンコクで注文した。パソコンは32台用意するつもりだがとりあえず12台で様子を見ることにし、日本へ帰った。

日本へ帰って活動のために必要な書籍やこまごまとした備品などを買い、予定通り7月15日にビエンチャン入りした。このまま永住するつもりだ。
仮の宿を探していると、あまり高級ではないが学校予定地のすぐ向かいにあるメコンホテルに、60uほどのアパートが空いていた。家具調度品すべてが揃っていて、掃除とベッドメーキングもしてくれる。家賃は月約5万円だがマネージャーに頼んで、1年契約で家賃約45万円にしてもらった。私にはちゃんとした宿舎を見付けるのに1年くらいは掛かるだろうとの考えがあった。

運悪く7月末にビエンチャンでアセアン拡大外相会議があり、ラオス政府の事務手続きは完全に止まってしまった。現地の日本人にこのことを話すと、「合意書(MOU)調印に1年、活動開始にあと1、2年かかるのが普通だ。」というので驚いた。
しかたがないのでバンコクに出て必要な買い物をし、外相会議が終わるのを見計らって帰って来た。するとなんと、MOUの手続きが進んでいて、8月17日に調印すると言うのである。依頼書を出してから4ヶ月の速さだ。

MOUの内容を見ると少し話が違っていたが、多少は目をつぶり、インターネットの費用が私の負担になっているところだけを修正してもらった。そして、8月17日に120人くらいの出席者の前で調印式が行われたのである。マスコミも来ていたらしく、現地の英字新聞に写真入りで大きく報道された。しかし、9月の開講はどう見ても無理なようなので余裕を見て12月を目標にすることにした。

Tetchan-Net training Center
てっちゃんねっと・トレーニング・センター)
1階をトレーニング用に、2階を生活空間にできる。
左上はハイスクールの事務所棟。教室は奥の方にある。
ところが数日後、教育局長が「インターネットの費用をどうしても捻出できない。ついてはいい場所があるのでそこでネットカフェを開き、生徒からも授業料を取ったらどうか。ネットカフェの運営はこちらでやる。」と言い出した。
場所を見に行くとビエンチャン・ハイスクールの構内にある延床面積330uほどの建物だった。これを一棟全部使ってよいと言うのである。もともと独身の先生の宿舎だったらしく小部屋が多くて使い勝手は良くないが、ある程度の改装もしてあり、少し手を加えればどうにかなりそうだった。口には出さなかったが、これはかなりいい話だと心の中で思った。

ネットカフェにするという考えは管理が大変なので保留にして、とりあえずインターネットの接続をしないで開講し、当初の予定どおり生徒からの授業料等は取らないことにした。そして、学校の名前は「てっちゃんねっと・トレーニング・センター」とすることになった。

(つづく)