<連載:てっちゃん in ラオス>


  第3話  水祭り

ビエンチャンへ帰ってみると、ホワさんと一緒に政府の要人だという人の娘婿のベーさんが待っていた。英語が堪能な土木技師である。700万円程の初期費用と月20万円ほどの運営費のことや慈善活動の内容、それに活動の目的など考えていること詳しく話すと、同じ専門分野の人間同士ということもあって話はかなり盛り上がった。しかし、住居と学校の家賃、従業員の給料、インターネットの接続や光熱費、その他の維持費や生活費などで毎月50万円ほど掛かりそうだった。

インターネットは速度がたった1メガでも月15万円もするのだ。日本では100メガで5千円程度だから単純計算で3000倍も高いことになる。また、学校として使えるような場所も数が少ないからか家賃が高く、インターネットを入れると30万円以上になってしまう。ラオスの物価はそれほど安くないことが次第に分かってきた。

ベーさんには「ラオス政府が空いている施設を無料で貸してくれて、インターネット接続にも特別な配慮をしてくれないと無理だ」と話した。結局、私の考えは甘く、ラオスでの活動はとても無理だという結論に達した。

ここで、妻の話をしておこう。15年ほど前、最初に慈善活動の話をした時はあきれ返って相手にしてくれなかったが、次第に私が本気であることが分かってきて「自分も手伝う」と言い出し、今まで見向きもしなかった海外に旅行をするようになった。ところが、私が最初にラオスを訪れた平成13年に進行性のガンが発見されたのである。3年間の闘病の末、平成16年2月に他界した。56歳であった。

その年の7月、駄目だとの結論を出したはずのラオスから「宿舎と学校用に良い物件が数か所あるので見に来てくれ」という連絡が来た。とりあえず行ってみたが、使えそうなのは家賃が月15万円もした。やはり高い。「妻が亡くなって間がないので、少なくとも一周忌が終わるまでは話を凍結したい」と、丁重に断った。実際はどこか長期ビザの取れる国で数人相手に活動できないかと考え初めていた。銀行の預金残高さえ十分あればタイでも長期ビザは取れるとのことだった。

Chao Fangum Garden
水祭り (ビエンチャン)
ラオスや近隣の仏教国では4月の中旬が正月で水祭りが盛大に行われる。。道路を歩いていたり車で通過したりすると水をかけられる。車にも水を積んでいて通行人に掛けている。
このあと6か月間、同じ町内会に住む中高年15人ほどにボランティアでパソコンの使い方を教えた。私独特の教え方に、最初は戸惑っていた人も勉強しているうちにパソコンアレルギーが取れて、日本語入力もできなかった人が、6か月間でインターネットやメールはもちろん、ワードの使い方も普通の人には負けないくらいに上達し、非常に感謝された。今までも業務の関係で部下や現地人にパソコンの使い方を教えていたが、このボランティア活動によって、パソコンを教えることに、いっそう自信がわいた。

平成17年、妻の一周忌が終わったすぐあとにラオスからまたもや連絡が入った。ビエンチャン市教育局が施設を無料で貸してくれるというのである。あまり期待していなかったが、4月の水祭りに合わせて観光がてら行くことにした。

タイとラオスで水祭りを堪能して、休み明けにビエンチャン市教育局長に会った。今度は良い話だった。市教育局の敷地内にある約50uの部屋を水、電気付きで無料で貸してくれ、インターネットのコストも負担すると言うのである。そして輸入には免税処置がとられ、長期ビザも発給してくれるらしい。ちょっと驚いた。

(つづく)