<連載:てっちゃん in ラオス>


  第12話  ラオス語の不思議
 ラオスに来て早いもので4年になりました。第1話からの読者はすでにご存知ですが、自己紹介をもう一度させてください。

 定年前に会社を早期退職し、そのときの奨励金を元に、小さな慈善スクールをラオスの首都ビエンチャンに開きました。高校生を相手にパソコンと日本語を教え、教職員には、業務に必要なパソコンの使い方を教えています。それ以外にも、目の不自由な子供たちに日本語を教えたり、小学生に折り紙を教えたりしています。2年前にラオス女性と結婚し、今は2人で運営しています。生涯活動としてできるだけ長く続けたいと思っています。

 今回は、ラオスについて少しお話をします。

 正式な日本名は「ラオス人民民主共和国」。国土は日本の本州よし少し広く、人口は約600万人。1人当たりのGDP(購買力平価)は2200ドルで日本の約15分の1です。国民はラオ族が中心で、隣のタイ人とはもともと同族だといわれていています。タイには2000万人ほどのラオ族が住んでいますので、ラオ族はラオスよりタイに多く住んでいることになります。

 14世紀にラーンサーン(百万頭の象)王国が建国されたのが、国としてのラオスの始まりとされ、その後、タイの支配下に入り、フランスに占領され、第二次世界大戦後の内戦を経て現在に至ります。年配の方はホーチミン・ルートというのを聞かれたことがあると思いますが、これはベトナム戦争当時、ベトナム共産党軍がラオス国内に補給ルートを確保したもので、これに対し、アメリカ軍は無数の爆弾を投下し、今でも大量の不発弾が残っています。

 前置きが長くなりましたが、それでは、「ラオス語の不思議」についてお話ししましょう。ラオス語とタイ語は非常に近く、文法はほぼ同じで、語彙もかなり似かよっています。 「わたしはごはんをたべます」は、ラオス語で(コイ・キン・カオ)といいます。中国語と同じで、基本的に1音節ずつに意味があります。(コイ)が「私」、(キン)が「食べる」、(カオ)が「ごはん」です。文型は「主語+動詞+目的語」ですので、英語と同じようですが、形容詞が名詞のあとに来るのでラテン系の言葉に近いでしょう。

ラオス文字
ラオス文字
 私はインドネシアに4年間いたので、インドネシア語がかなりできますが、口語のインドネシア語とラオス語の文法はよく似ています。「それじゃ、ラオス語なんかすぐに覚えられるでしょう?」と言われそうですが、おっとどっこい、そうは行きません。「わたしはごはんをたべます」は12音節ですが、ラオス語では、たったの3音節なんです。日本人が「わ・た・し」と言ったときには、ラオス人はすべて言い終えている計算になります。同じことを言うのに日本語は4倍時間が掛かるということです。

 なぜ、こんなに少ない音節で済むのかというと、音の多さです。子音が33個、母音が28個ありますので、これだけで33×28=924の音節が作れます。これに声調記号が3つ、末尾子音というものが8つあり、924×3×8=22176の音節が作れます。 たとえば、日本人には「コオ」と聞こえる音がラオス語には・・・・・・と、72個もあります。

 使わない音もありますが、いずれにしてもかなりの数です。日本語の音節は50音に濁音、拗音、促音などを入れても120ほどです。関西弁にも「子」と「粉」、「甲」のように声調の違いがありますが、せいぜい3種類です。ラオス語を学ぶ上で難しいのはこの点です。

 では、日本語を学ぶラオス人にとって何が難しいかと言うと、動詞の活用などの複雑な文法と音節の多さです。日本語は音節が多いので、早口ことばに聞こえるそうです。
(つづく)